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【解説】非オピオイド鎮痛薬って?

自己紹介

こんにちわ、iwata(@iwamegane)です。薬剤師として緩和ケア病棟を専任し19年。その経験をもとに、患者さんとのエピソード、緩和ケアに関連する薬について情報発信しています。

目次

非オピオイドの種類

がん性疼痛に使用される非オピオイド鎮痛薬は主に2種類あります。

非オピオイド
  • NSAIDs
  • アセトアミノフェン

NSAIDs

Non Steroidal Anti Inflammatory Drugs  非ステロイド性抗炎症薬
通称、NSAIDsと呼んでいます。読み方は「エヌセイズ」です。ステロイドではないが、ステロイドの効果の一つである炎症を抑える作用(抗炎症作用)持っています。また、痛みを押させる作用(鎮痛作用)、熱を下げる作用(解熱作用)をもっている薬剤の名前です。

痛みの伝達

NSAIDsの効果の仕組み説明する前に、痛みの伝達について説明します。
手をぶつけたりし刺激されると、皮膚の細胞膜にあるアラキドン酸という物質が、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の働きによって、プロスタグランジン(PG)という物質を作り出します。このプロスタグランジンは、痛みを増強する物質であるブラジキニン(BK)を強めることで、中枢へ痛みが伝達されます。COXという略語は、コックスと呼びます。

COX:Cyclo Oxygenase
PG:Prostagrandin
BK:BradyKinin

効果の発現する仕組み(作用機序)

合成酵素COX(シクロオキシゲナーゼ)の働きを阻害することで、抗炎症作用、鎮痛作用を発揮します。

COXの種類

COX-1(コックスワン)
大部分の正常細胞や組織に定常的に発現しています。

COX-2(コックスツー)
炎症によって誘導されます。

コックスには2種類存在します。COX-1は、体の機能を保つために活動しています。COX-2は、炎症を起こした時に現れて活動します。

プロスタグランジン

プロスタグランジンは、体を維持するために働いている物質です。十数種類に分類されます。生活活性物質とも呼ばれています。「痛い!」と感じたときに、NSAIDsによって痛みの伝達に影響するCOX2だけを抑えられればよいのですが、そうはいかず…。COX1も抑えてしまいます。結果として、体の維持している働きを押させてしまうことで、副作用(有害事象)が起こってしまいます。プロスタグランジンの主な活躍の場として、胃粘膜保護があります。NSAIDsによって、この活躍も抑えられてしまうめ、胃があれる(胃腸障害)の副作用が起こってしまいます。

プロスタグランジンの主な役割
  • 胃粘膜保護増改
  • 腎血流量の調製
  • 子宮収縮
  • ブラジキニン(発痛物質)の疼痛閾値の低下

副作用

副作用対策が必要です。胃腸障害の副作用リスクを減らすために、出来るだけ空腹時は避け、直接刺激をやわらげたり、胃薬を飲んだりします。入院患者さんがNSAIDsを服用している場合は、胃薬を併用しています。もし、胃薬を飲んでいなければ医師へ確認し追加してもらいます。

主な副作用

 胃 腸:腹痛、嘔気、食欲不振、潰瘍、出血、下痢
 腎 臓:浮腫、間質性腎炎、ネフローゼ症候群
 肝 臓:肝機能障害
 血小板:出血傾向
 子 宮:妊娠期間の延長、分娩阻害

各薬剤

COX2選択に阻害する薬剤

選択性はあり、胃腸障害は少ないです。しかし、少なからずCOX-1も阻害するため胃腸障害のリスクはあります。
 セレコキシブ(セレコックス®錠)
 エトドラク(ハイペン®錠)
 ロルノキシカム(ロルカム錠)

プロドラック

体の中で形が変化し効果を発揮します。胃に入った段階では、効果を発揮する形ではないので、副作用である胃腸障害は少ないです。しかし、胃腸障害の副作用がでるリスクはあります。
 ロキソプロフェン(ロキソニン®錠)

効果が強い!

効果も強いです。しかし、胃腸障害の副作用がでるリスクも強いです。
 ジクロフェナク(ボルタレン®錠、ボルタレン®坐剤)


アセトアミノフェン

NSAIDsではありません。なぜなら、痛みをとる作用(鎮痛作用)、熱を下げる作用(解熱作用)はありますが、炎症を抑える作用(抗炎症作用)がないからです。

海外において、がんの痛みに使う場合は1回1,000㎎飲んでいました。がんの痛みを抑えるために飲むには、1回1,000㎎くらい服用したほうが、しっかりと効果が現れます。日本でも、2011年にがん性疼痛に対して1回1,000㎎飲んでい良いことを承認しました。緩和ケア病棟では、2011年より以前から1回1,000㎎使用していました。

用法・用量

〇 鎮痛(頭痛、打撲痛、がんによる疼痛、抜歯、等)
1回300~1,000㎎ 投与間隔は4~6時間 1日の最大飲める量は4,000㎎。

〇 解熱・鎮痛(急性上気道炎)
1回300~500㎎ 1日2回まで 1日最大飲める量は1,500㎎

〇 小児における解熱・鎮痛
1回10~15㎎/kg 投与間隔は4~6時間 1日最大60㎎/kg、成人量は超えない
※原末は苦いので、小児へはドライシロップ製剤を進めています。
 もし、小児に対して原末が処方された場合、疑義照会して変更します。

NSAIDsとの違う点

がんの治療は早期からおこない、治療期間は年々延長しています。鎮痛薬をのむ期間も延長しています。NSAIDsを長期投与することで、消化性潰瘍のリスクも大きくなります。また、腎機能への影響するリスクもあります。その点、アセトアミノフェンであれば、消化管障害のリスクが少ないため、長期で飲んでも副作用リスクが低いといる点は、NSAIDsとは違う点です。

副作用

飲む量が多くなることで、副作用リスクも大きくなります。注意が必要な、重い副作用の一つに重症肝機能障害があります。
治療には、N-アセチルシステインを使用します。
最小致死量の報告としては、欧米で1日18,000㎎、日本では1日2400㎎である。
※ 18,000㎎は、500㎎錠を36錠飲んだ計算…、そんなに飲めるんですね。


効果の発現する仕組み(作用機序)

痛みをとる仕組みは、なんと不明なんです!
熱を下げる効果は、脳にある体温を調整している場所(体温中枢)に作用し、熱の放散を増大させます。しかし、痛みをとる仕組み(鎮痛効果)については、大脳の痛みを感じる閾値を高くすると、推定されている。ということで、今でもはっきりとした仕組みはわかっていません。しかし、昔から使われて言います。安全に使用できれば、問題ないですよね。


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この記事を書いた人

緩和薬物療法認定薬剤師。

1978年に千葉県銚子市生まれ、地元高校へ進学。その後、日本大学薬学部へ入学。卒業後、地元の病院に就職。勤務2年目から緩和ケア病棟を専任し20年。その経験をもとに「病棟で出会った患者さんとの素敵なエピソード」、実際に経験をもとに「緩和ケアに関連する薬の使い方」など情報発信しています。

趣味はスポーツ、アウトドア。高校からラグビーを始め、現在は小学生を対象に銚子ラグビースクールのコーチを務めています。また、「庭で焚火を楽しんで、夜のベットで寝る」程度のアウトドアを楽しんでいます!もう一つのブログ「銚子のぬし釣り」では、その程度のアウトドア情報を発信しています。

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