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オピオイドの副作用「便秘」、治療薬は何を選びますか?薬剤師が解説します。

便秘に対して何を使えばよいのかな?

iwata

本記事では、上記のような悩みを解決します。

自己紹介

こんにちわ、iwata(@iwamegane)です。薬剤師として緩和ケア病棟を専任し19年。その経験をもとに、患者さんとのエピソード、緩和ケアに関連する薬について情報発信しています。

目次

実際、これ使っています。

  • マグネシウム製剤(マグミット®)
  • センノシド(プルゼニド®)
  • ビサコジル(テレミンソフト®坐薬)

便秘治療薬

10数年前、便秘薬の種類は少なかったです。2010年頃から、新しい便秘治療薬が販売されました。さらに効能・効果をみてみると、ただの便秘症では無く、「〇〇便秘症」と便秘症が分類されてるようになりました。

薬剤名 → 効能・効果(発売開始月)

マグネシウム製剤(マグミット®)→ 便秘症(1950年、酸化マグネシウムとして)
センノシド(プルゼニド) → 便秘症(1961年11月)
ビサコジル(テレミンソフト®坐) → 便秘症(1968年3月)
ピコスルファート(ラキソベロン®内用液) → 便秘症(1980年4月)
ルビプロストン(アミティーザ®) → 慢性便秘症(2012年11月)
リナクロチド(リンゼス®) → 慢性便秘症(2017年3月)
ナルデメジン(スインプロイク®) → オピオイド誘発性便秘症 (2017年6月)
エロビキシバット(グーフィス®) → 慢性便秘症 (2018年4月)


なぜ、副作用対策が必要なのか?

オピオイド鎮痛薬の副作用は色々ありますが、便秘について解説します。がん性疼痛を緩和するため、オピオイド鎮痛薬を投与します。除痛が図れる適正な用量まで調整することが大切です。鎮痛効果が期待できる量までタイトレーション(用量調整)しないと副作用(便秘、嘔気)だけが出現してしまいます。患者さんにとって、疼痛は緩和されないのに副作用で苦しんでしまう、オピオイド鎮痛薬の服用拒否に繋がり結果として、がん性疼痛は緩和されず生活の質が低下してしまう恐れがあります。

例を挙げて考えてみます。持続痛の緩和を図るためにはモルヒネ1日量して60㎎服用が必要な患者さんがいると仮定します。下に示しました、「モルヒネの50%鎮痛作用に対する各作用の比率」より50分の1量、1.2㎎で便秘が出現します。10分の1量、6㎎で嘔気は出現する可能性があります。

「MSコンチン®錠10㎎ 1回1錠、1日2回12時間毎」が投与開始となった場合、持続痛を緩和する用量にまだ達していません。しかし、便秘、嘔気が出現します。副作用がつらくオピオイド鎮痛薬の服用拒否されると持続痛を緩和することが出来ません。しっかりと副作用対策をして、1日量として60㎎まで増量していく、タイトレーションしていく必要があります。


便秘を発現する作用機序

日本緩和医療薬学会
がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014年版
2章 背景知識 4薬学的知識 P.59 より。
最新の2020年版の同じ項目には便秘の事は詳しく書いてありませんでした。そこで、2014年版より勉強しました。

便秘は高頻度で発現し、耐性形成はほとんど起こらないため、下剤を継続的に投与するなどの対策が必要になる。
(機序)
・各種臓器からの消化酵素の分泌抑制
・消化管蠕動運動の抑制
・肛門括約筋の緊張
・腸管で食物通過時間が延長し、水分吸収が進み便が固くなる


オピオイド鎮痛薬を飲み始めたら、どの下剤を選びますか?

日本緩和医療薬学会
がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版
『3章 推奨 2.有害作用に関する臨床疑問』より

オピオイドが原因で、便秘のあるがん患者に対して、下剤、その他の便秘治療薬の投与は推奨されるか?

オピオイドが原因で、便秘のあるがん患者に対して、オピオイドの投与と同時に、または投与後に、下剤を定期投与することを推奨する。(強い推奨、弱い根拠に基づく)

オピオイドが原因で、便秘のがるがん患者に対して、末梢性μオピオイド受容体拮抗薬の投与を条件付きで推奨する。(弱い推奨、中等度の根拠に基づく)

[解説]一部抜粋
臨床現場では、浸透圧性下剤(酸化マグネシウム、ラクツロース)、大腸刺激性下剤(センナ、ピコスルファート)が一般的に広く投与されている。また、海外のガイドラインでは、ほとんどの患者に効果があり、安全性が高く、コストが安いことから、下剤が第一選択薬で、末梢性μオピオイド受容体拮抗薬は、下剤を投与しても十分な効果が得られない難治性のオピオイド誘発性便秘の患者に投与するとされている。
(中略)
オピオイドが原因で、便秘のあるがん患者に対して、オピオイドの投与後に下剤、末梢性μオピオイド受容体拮抗薬を、またオピオイドの投与と同時に下剤を定期に投与することを推奨する。


オピオイド鎮痛薬を開始した場合、便秘(副作用)に対する基本的な対策は、飲めれば、マグミット®錠、センノシド®錠、ラキソベロン®液。または、スインプロイク®錠。ということになります。
そして、ガイドラインには記載されていませんが、実際の現場では飲めなければ、テレミンソフト®坐薬にて対応しています。 また、薬価が低ければ患者さんの経済的な負担も減るので助かります。

(薬価)2021年9月現在
 マグミット®錠330㎎:5.7円/錠  1日6錠服用とすると、28日分で957.6円。
 プルゼニド®錠12㎎:5.7円/錠   1日2錠服用とすると、28日分で319.2円。
 ピコスルファート液※:8.5円/mL(1mL=15滴)  1日10滴とすると、28日分で158.7円。
 スインプロイク®錠0.2㎎:272.1円 1日1錠服用とすると、28日分で7,618.8円。
 テレミンソフト®坐薬10㎎:20.3円 1日1個使用すると、28日分で568.4円。
 ※ ラキソベロン®液の後発品




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この記事を書いた人

緩和薬物療法認定薬剤師。

1978年に千葉県銚子市生まれ、地元高校へ進学。その後、日本大学薬学部へ入学。卒業後、地元の病院に就職。勤務2年目から緩和ケア病棟を専任し20年。その経験をもとに「病棟で出会った患者さんとの素敵なエピソード」、実際に経験をもとに「緩和ケアに関連する薬の使い方」など情報発信しています。

趣味はスポーツ、アウトドア。高校からラグビーを始め、現在は小学生を対象に銚子ラグビースクールのコーチを務めています。また、「庭で焚火を楽しんで、夜のベットで寝る」程度のアウトドアを楽しんでいます!もう一つのブログ「銚子のぬし釣り」では、その程度のアウトドア情報を発信しています。

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