注射薬の投与方法はときかれたら、静注ですと答えませんか?がん性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬の注射剤を投与する時は、持続皮下注が有効的な投与方法なのです!
この記事では、オピオイド鎮痛薬の特徴について解説しています。
こんにちわ、iwata(@iwamegane)です。薬剤師として緩和ケア病棟を専任し19年。その経験をもとに、患者さんとのエピソード、緩和ケアに関連する薬について情報発信しています。
持続皮下注入法のメリット
- 微量から投与可能
- 安定した血中濃度
- 有害事象が少ない
- 血管炎などトラブルがない
- 外出可能
- 在宅で使用可能
- 静脈内投与より侵襲が少ない
- 複数の注射剤を混合できる
オピオイド鎮痛薬を投与する場合、持続皮下投与は便利な投与方法です。CSI※と呼ばれています。緩和医療学会や海外のガイドラインでも推奨されています。
投与は簡便でありかつ効果的な方法で、経口投与や経皮投与が出来ない患者の第一選択となる。持続静注は、皮下投与は禁忌のとき(投与量が多い、浮腫など)、早急に疼痛コントロールが必要なときに使われる。
EAPA(ヨーロッパ緩和医療学会)ガイドランより
皮下投与はモルヒネおよびヒドロモルフォンの投与において簡便で効果的であり、経口または経皮投与でオピオイドを投与できない患者にとって、最初に選択される投与経路である。
ESMO(欧州臨床腫瘍学会)ガイドライン
投与経路を考える時、もちろん内服が一番簡単です。しかし、入院しているのであれば患者さんの了承の上、内服が出来ていたしても、持続皮下投与をする利点はあります。実際に、経験上として静脈内投与と比べても、鎮痛効果に差はありません。静脈内投与より、ゆっくりと投与され吸収されることから急激な血中濃度の上昇が無いため、有害事象発現も少ないと言われています。
病院において注射剤の投与について静脈内投与は多く、皮下投与についてスタッフがあまり慣れていない投与方法です。そのため、敬遠されがちですが利点を考えると活用してほしい投与方法です。
※ CSI:continuous subcutaneous injection
全量を6mLする
注射薬と生理食塩液などを用いて、調整します。全量をどのくらいにするかは、明確な決まりはありません。しかし、6mLや12mLにすることで、1日量を計算しやすいメリットがあります。ここでは、全量を6mLにするメリットを解説します。
- 1日投与量を計算しやすい
- 水分量を制限できる
- 20%ずつ増減できる(用量調節が簡単)
投与速度を調整することで、20%ずつ増減することができます。また、投与速度をみれば「ベースが30㎎、0.15であれば60%、1日24㎎」と、処方内容からすぐに1日投与量を計算することもできます。
慣れてくると、一瞬で1日投与量が計算できます。
モルヒネ注(10mg/L) 3A + 注射用水3mL (全量6mL)
持続皮下投与 0.15mL/hr
(計算例)
0.05mL/h : 0.05mL/h × 24h = 1.2mL/24h (20%)
0.10mL/h : 0.05mL/h × 24h = 2.4mL/24h (40%)
0.15mL/h : 0.05mL/h × 24h = 3.6mL/24h (60%)
0.20mL/h : 0.05mL/h × 24h = 4.8mL/24h (80%)
0.25mL/h : 0.05mL/h × 24h = 6.0mL/24h (100%)
複数の注射剤を混合できる
皮下投与のシリンジの中に、症状を緩和するための色々な注射薬を混合し投与することができます。ルートを増やす必要はなく、患者さんのストレスも少なくなります。
[嘔気]
トラベルミン注、プリンペラン注、セレネース注、サンドスタチン注
[せん妄]
セレネース注
[分泌液抑制]
ブスコパン注
まとめ
がん終末期において、静脈内ルートを確保することも大変になってきます。ぜひ、皮下投与も活用し患者さんのQOL向上につながることを期待します。
- 微量から投与可能
- 安定した血中濃度
- 有害事象が少ない
- 血管炎などトラブルがない
- 外出可能
- 在宅で使用可能
- 静脈内投与より侵襲が少ない
- 複数の注射剤を混合できる
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