錠剤がのみづらいんです。
本記事では、上記のような悩みを解決します。
こんにちわ、iwata(@iwamegane)です。薬剤師として緩和ケア病棟を専任し19年。その経験をもとに、患者さんとのエピソード、緩和ケアに関連する薬について情報発信しています。緩和薬物療法認定薬剤師。
緩和ケア病棟で患者さんの部屋に薬の説明をするため訪問すると「錠剤がのみづらい」と訴えがありました。そこで、薬剤師としての解決策を考えてみました。
患者さんの基本情報
- オキシコドン徐放錠
- アセトアミノフェン錠
- レベチラセタム錠
- ラベプラゾール錠
患者さんの情報です。60歳女性、大腸がんの患者さん。背部痛、呼吸困難感の訴えがあります。投与されていた薬剤について解決策を考え、処方医へ提案しました。
- オキシコンチンをヒドロモルフォンへ変更する。
- 制酸剤をOD錠へ変更する。
- 静脈内投与、もしくは皮下投与へ変更する。
提案内容を具体的に解説します
オキシコドンをヒドロモルフォンへ変更する
オキシコドン徐放性製剤は、1日2回服用する必要があります。同じオピオイドである、ヒドロモルフォン徐放性製であれば、1日1回の服用です。添付文書にある換算表をもとにオピオイドスイッチングすることを提案しました。もともと呼吸困難の訴えもあり、呼吸困難感軽減が期待できるオピオイドは、モルヒネもしくはヒドロモルフォンです。
終末期がん患者では、徐々に飲み込む力が低下してくるため、内服している種類を減らす検討を行います。しかし、鎮痛薬は出来るだけ服用していてほしい薬剤です、少なくともオピオイドは継続する患者さんは多いです。
制酸剤のOD錠に変更する
普通錠より、口腔崩壊錠の方が患者さんの服用する負担は軽減されます。制酸剤である、ラベプラゾールが普通錠でした。そこで、同効薬で口腔崩壊錠であるランソプラゾールOD錠を提案しました。
投与経路を「静脈内投与」もしくは「皮下投与」へ変更する。
服用できなければ、経口投与以外の投与経路を検討します。変更できる投与経路として、貼付剤、坐薬、注射薬を検討します。しかし、この患者さんは人工肛門を増設していたため坐薬による直腸内投与は出来ませんでした。そこで、注射薬への変更を考えました。
注射剤へ変更する
内服していたオキシコドン錠、アセトアミノフェン錠、レベチラセタム錠、制酸剤は注射薬にて投与可能です。在宅においては、使用できる注射薬の制限があるため難しい場合もあります。しかし、入院中であればルートを確保しなければ行けないデメリットはありますが、注射薬による薬物療法はとても有用です。例えば、入院中に疼痛コントロールを行う場合、内服可能であっても迅速にコントロールをするためオピオイド注射薬で調節することもあります。疼痛コントロールが良好となり用量を決定すれば、内服もしくは貼付剤へ変更します。
坐薬へ変更する場合(参考)
今回、坐薬への変更は出来ませんでしたが、坐薬による直腸内投与可能だった場合について考えてみます。
オピオイド製剤における坐薬には、モルヒネを成分とするアンペック坐剤があります。アセトアミノフェン製剤における坐薬製剤もあります。レベチラセタム製剤における坐薬は、処方薬として販売されていませんが院内製剤として対応することが可能です。抗てんかん薬(バルプロ酸など)の多くは、院内製剤として坐剤を作り対応可能な薬剤です。
呼吸困難に対する対応
呼吸困難の訴えもありました。そこで、呼吸困難にも効果の期待できるモルヒネ、もしくはヒドロモルフォンへ変更することで、苦痛緩和が期待できるだろうと考えました。
なぜ、モルヒネやヒドロモルフォンは呼吸困難に効果があるのか?
「効果があった」という報告があるからです。
構造上の違い、この側鎖があるから効果を発揮する、など具体的な作用機序が解明されているわけではありません。しかし、世界中のオピオイド使用経験から「モルヒネは呼吸困難に効果がある」と報告されています。実際に、緩和ケア病棟において呼吸困難に対して投与されたモルヒネやヒドロモルフォンが、呼吸困難を緩和している場面を多く経験しています。
注射薬投与へ変更する時のポイント
終末期がん患者さんにおいて、状態の悪化に伴い内服できなくなるのは自然の経過です。最終的に、オピオイド鎮痛薬など、内服している薬剤は注射薬へ変更される場合は多いです。
内服している薬剤を全て投与すると、「投与回数」や「輸液量」が患者さんの負担となってしまう可能性があります。例えば、アセトアミノフェン注射薬を1,000㎎は100mL、1日4回投与するとこれだけでも400mLになります。一般病棟であれば、輸液量が増えることは直接患者さんへの負担になることはありません。しかし、緩和ケア病棟の終末期がん患者さんであれば、「輸液量」増加が浮腫や胸水増加など負担になってしまう可能性があります。
鎮痛薬について、オピオイド、非オピオイド、鎮痛補助薬と併用し疼痛コントロールを行います。しかし、「投与回数」や「輸液量」を少なくするため、最終的にはオピオイド1薬剤だけで疼痛コントロールを行っていくことも多いです。
今回も最終的にはオピオイド持続皮下投与だけの投与になると思います。抗てんかん薬についても、予防投与はせず、発作が起こった時に対応となると思います。
しかし、点滴を減らしたり、薬剤を中止するとご家族は「治療をしていない、寿命が短くなるのでは」と不安に思います。そこで、事前に担当医師より、状態を説明した後、メリットとデメリットのバランスを考え必要最低限の薬剤投与となっていくことを事前に説明することで、ご家族の精神的ケアに繋がると思います。
ご家族の気持ちも考えます。
まとめ
同じがんでも、使っている薬剤は個々に違います。また、既往歴、治療歴、合併症、身体状況など、色々な要因を考慮して、今患者さんにとって一番有益なケアを考えています。悩むことも多いですが、医師、看護師、理学療法士、栄養士、公認心理師、など多職種で考えていくことで、すこしでもよりよりケアにつながっているんだなぁと思います。
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