ナルサスを朝8:00に定期投与しています。でも、毎日のように朝方にレスキューを使います。薬剤調整はどうすればよいですか?
本記事では、上記のような悩みを解決します。
こんにちわ、iwata(@iwamegane)です。薬剤師として緩和ケア病棟を専任し19年。その経験をもとに、患者さんとのエピソード、緩和ケアに関連する薬について情報発信しています。緩和薬物療法認定薬剤師。
患者さん情報
介入前の処方
ナルサス錠 2㎎ 1回1錠 1日1回 (8:00) ※ベース
ナルサス錠 6㎎ 1回1錠 1日1回 (8:00) ※ベース
ナルラピド錠1㎎ 1回1錠 疼痛時 ※レスキュー
デエビゴ錠2.5㎎ 1回1錠 不眠時
背景
70歳男性、肺がんの患者さん、転移不明。体重は50kg。朝方、胸部の痛みがあり、レスキューを1回使用している。日中のレスキューの使用はない。ただ、日中にやや眠気を訴えることがある。また、日中に頭痛の訴えもあり、その痛みに対してレスキューを使用している。
※ 実際に関わった患者さんについて、背景や処方内容を変更し架空の症例としています。
内科病棟を担当してる薬剤師より相談されました。一緒に検討し処方医へ提案、処方変更となりました。
結論
(変更)※ 頓用から定期内服へ変更
- デエビゴ錠2.5㎎ 1回1錠 1日1回(眠前)
(追加)
- カロナール錠500㎎ 1回1錠 1日1回(眠前)
結論に至るまでの検討内容について、以下にまとめました。
アセスメント
痛みの性質について
胸部の痛みについては、しびれるような痛みではないことを患者さんから聞いていました。神経障害性疼痛の可能性があれば、タリージェ錠の眠前投与もよいかと考えましたが、今回は適応はないと考えました。
鎮痛薬の効果の切れ目の痛み
薬の代謝には個人差があるため、ナルサス錠の代謝がはやく鎮痛効果の持続時間が短くなっている可能性も考えられます。その場合は、ナルサス錠であれば通常1日1回服用するタイプですが1日1回服用へ変更する、オキシコンチン錠など1日1回服用するタイプであれば1日3回服用へ変更する、といった投与方法の変更します。
日中の眠気について
日中に眠気の訴えがありました。胸部の痛みについてがん性疼痛であり、ベースの増量もよいかと考えました。しかし、この患者さんは日中に胸部の痛みの訴えはなく持続痛ではありません。ベースの増量で胸部の痛みは軽減するかもしれませんが、日中の眠気を増強させてQOL(生活の質)を低下させてしまうリスクがあります。そこで、今回はベースの増量は提案しませんでした。
また、少し気になった点があります。それは、頭痛に対してレスキュー(オピオイド)を使用していた点です。頭痛に対しては、アセトアミノフェンは効果的です。そこで、今回の胸部に痛みにについての薬剤調整とは異なりますが、頭痛に対してはカロナール錠を服用する事を医師へ提案しました。効果も期待できるともに、日中のねむけの軽減にもつながると考えました。
鎮痛薬の検討
痛みの性質、日中の眠気など、患者さんの状況を考慮して、いくつか鎮痛薬について検討をしました。
- ナルサス錠の服用タイミングを朝食後から夕食後へ変更
- ナルサス錠の服用回数について、1日1回から1日2回へ変更
- 効果時間の長いフェントステープへ変更する
- ロキソニン錠 1回1錠 1日1回(夕食後)
- カロナール錠500㎎ 1回1錠(夕食後)
オピオイドクライシスの可能性
レスキューの使用は深夜から朝方に、1日1回だけでした。また、看護師さんの情報ですが、患者さんは「痛みは変わらないけど、レスキューを使うと眠れるよね」と話していたそうです。
痛みがあって眠れないためレスキューを使用しているのか、夜の起きてしまって「痛みがあるかなぁ」と思ってレスキューを使用しているのか、判断は難しいです。でも、看護師さん情報から少しオピオイドに精神依存している可能性も否定できませんでした。そこで、夜間の睡眠確保目的でデエビゴ錠を頓用から定期内服へ切り替えることにしました。
結論
どの選択が正しいか決めるのは難しいです。患者さん個々の状況によって選択は変わってきます。今回は、朝方に痛みが出現している事は確かと考える一方、ややオピオイドクライシスの可能性もあるかと考え、以下の提案としました。
(変更) ※ 頓用から定期内服へ変更
- デエビゴ錠2.5㎎ 1回1錠 1日1回(眠前)
(追加)
- カロナール錠500㎎ 1回1錠 1日1回(眠前)
経過
翌日、睡眠確保が図ることができました。朝のレスキューの使用もありませんでした。その後、ナルサス錠の服用タイミングを夕方に変更し、翌日から朝方のレスキュー薬の使用は無く経過されていました。
服用タイミングを夜にすることで解決しました!
服用タイミングを朝から夕へ変更する方法
変更する当日の朝は服用せず、夜に服用します。その間、薬物血中濃度の低下により疼痛が出現する可能性もありますが、もし痛みがあるようであればレスキュー薬で対応していきます。
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