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【注意】セレネース注とリンデロン注の配合変化を回避する方法。

たまにセレネース注とリンデロン注が配合変化を起こすんだよね。

iwata

本記事では、上記のような悩みを解決します。

自己紹介

こんにちわ、iwata(@iwamegane)です。薬剤師として緩和ケア病棟を専任し20年。その経験をもとに、患者さんとのエピソード、緩和ケアに関連する薬について情報発信しています。

目次

配合変化を回避する方法

注射薬を調整する時、リンデロン注を最後に混合する!

セレネース注とリンデロン注を混合すると、セレネース注が白濁します。そこで、出来るだけセレネース注が希釈された状態(希釈効果を利用)でリンデロン注を混合することで、配合変化(直後に白濁)を回避することができます。

ステロイドとセレネースが同時投与される場面

ステロイド注を投与する場面

オピオイド鎮痛薬は痛みを緩和するため投与されます。同時にステロイドを投与する場面も多いです。例えば、倦怠感の緩和する、脳浮腫の改善、前立腺がん治療など、多くの場面で、ステロイド剤は投与されます。また、オピオイドが皮下投与されている場合、挿入部位に発赤や硬結を起こすことがあります。その時も、炎症を抑える効果のあるステロイドを少量混合し投与することがあります。もちろん、発赤や硬結を起こす原因は薬剤の違いや、投与速度が影響しているという報告はあります。

セレネース注を投与する場面

セレネース注は、精神神経科領域において鎮静目的に使用される薬剤です。緩和ケア領域において、鎮静目的という意味合いもありますが、嘔気やせん妄を緩和するためにセレネース注(5mg/1mL)を0.5~1A/日程度で投与します。

リンデロン注とセレネース注の配合変化について

セレネース注とリンデロン注は配合変化について、販売元の製薬会社の資料などから明確なデータはありません。しかし、各薬剤のpHを確認したところ、配合変化を起こす可能性が考えられます。

薬剤のpH

セレネース注 ph = 3.5~4.2

リンデロン注 ph = 7.0~8.0

各薬剤のpHを比較すると、セレネースのpHが急に変動すると配合変化を起こす可能性が考えられます。緩和ケア病棟では、セレネース注とリンデロン注が混合され投与されることは多いです。普段は、配合変化を起こしたという相談はありませんが、数ヶ月に1、2回くらい配合変化を起こしています。

なぜ、白濁したのか?

ナルベイン注のある注射処方を調整していたら、白く濁ってしまいました!

先日、緩和ケア病棟の看護師さんから連絡が入りました。痛みを緩和するためにオピオイド鎮痛薬であるナルベイン注の注射処方を調整している時に、白濁してしまったそうです。対応策について、医師からも相談されていました。もちろん、セレネース注もしくはリンデロン注を投与しなれけば問題は解決します。しかし、痛みや嘔気を緩和するためできれば両薬剤とも投与を続けたいところです。

実は、セレネース注とリンデロン注は普段から投与される場面は多いのですが、配合変化を起こすことなく調整されています。しかし、たまに配合変化を起こしたと看護師さんから報告されます。そこで、配合変化を起こさない方法を考えました。もしかすると、調製する順番も影響するのではないかと推測しました。まず、看護師さんに調整した状況を聞いてみました。

注射処方内容

ナルベイン注 (2mg/1mL) 2A (2mL)
セレネース注 (2mg/1mL) 0.5A (0.5mL)
リンデロン注 (4mg/1mL) 0.5A (0.5mL)
注射用水 3mL

(全量6mL) 持続皮下投与

10mLシリンジを用いて、注射用水、セレネース注、リンデロン注と混ぜたら白濁しました。

ナルベイン注は麻薬です、最初に混合する時に間違えると破棄するために始末書を書かなければいけません。そこで、麻薬は最後に混合することが基本です。今回も、看護師さんはナルベインを最後に混合しようとしていました。

iwata

さすが看護師さん、!

実験

希釈効果

シリンジ内で酸性あるいは塩基性の薬剤を直接混合すると、混濁、沈殿を生じる可能性が極めて高くなるが、容量の大きな輸液へ混合することで安定化する場合があります。したがって、濃度の濃いあるいは溶けにくい薬剤から混合すると、配合変化を生じにくくなります。

本来、麻薬は最後に混合しますが、希釈効果を利用することでセレネース注が白濁しないのでは?と推測し、リンデロン注を最後に混合したほうがよいと考えました。そこで、こっそり実験を行いました。

実験 ① セレネース注を希釈せず、リンデロン注を混合する

実験 ①

シリンジ10mLを使用。
① セレネース注を吸い取る
② リンデロン注を吸い取る

結果 ①

セレネース注を吸い取ったシリンジに、まったく希釈せずに直接リンデロン注を吸い取ってみると結晶ができるくらい白濁しました!ここで、さらに注射用水2mLを加えたところ、無色透明に変化しました。たった、2mLですが希釈効果により白濁しなかったのだと思います。

実験 ② セレネース注を希釈し混合する

実験 ②

シリンジ10mLを使用。
① 注射用水3mLを吸い取る
② セレネース注を吸い取る  +ここでよく振って混ぜる!
③ リンデロン注を吸い取る

結果 ②

少しだけ白濁しました。しかし、最初に看護師さんが報告してきた時に確認したシリンジと比べると明らかに白濁しませんでした。さらに、そのシリンジに注射用水を2mL追加したところ、無色透明に変化しました!よく振って混合することで、希釈効果により白濁しなかったと思います。 

調製する順番を決定!

  1. 注射用水を吸い取る
  2. セレネース注を吸い取る
  3. ナルベイン注を吸い取る
  4. よく混ぜる
  5. リンデロ注を吸い取る

この方法で、何とか白濁することは回避できています。セレネース注を投与してる患者さんに、リンデロン注を混合して投与する場面は多くはありませんが、そんな時は吸い取る順番を考えると配合変化を回避できる場面もあります。

ちょうど、実験をしている時に通り過ぎた、ちょっと先輩の看護師さんは「麻薬だけでど、途中で混ぜちゃうけどなぁ」と言っていました。

iwata

マニュアル的にはNGですね…

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この記事を書いた人

緩和薬物療法認定薬剤師。

1978年に千葉県銚子市生まれ、地元高校へ進学。その後、日本大学薬学部へ入学。卒業後、地元の病院に就職。勤務2年目から緩和ケア病棟を専任し20年。その経験をもとに「病棟で出会った患者さんとの素敵なエピソード」、実際に経験をもとに「緩和ケアに関連する薬の使い方」など情報発信しています。

趣味はスポーツ、アウトドア。高校からラグビーを始め、現在は小学生を対象に銚子ラグビースクールのコーチを務めています。また、「庭で焚火を楽しんで、夜のベットで寝る」程度のアウトドアを楽しんでいます!もう一つのブログ「銚子のぬし釣り」では、その程度のアウトドア情報を発信しています。

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